SMKトップ > イベント情報一覧|2011年度 > 技術記事 TransferJet(TM)用RFモジュールの紹介
TransferJet™用RFモジュールの紹介
概要
SMKは、PCI Express(注1)インターフェイスに対応した注2TransferJet™用RF Module(型番:TJ101)を開発し、2011年4月にサンプル出荷、5月に量産開始予定である(写真1)。 TJ101は、ソニーが第2世代品として2011年2月から量産を開始したTransferJet™通信対応LSI(型番:CXD3270GG)を採用している。このことで、第1世代のLSIが実装されているRF Moduleと比較し、消費電力の低減、通信速度の改善が図られている。また、TJ101の外形はHalf-Mini Card Size ( H2 Type )に対応している。よって、ノートパソコン、デジタルカメラ、プリンタ、複合機などの組み込み用に実装するうえでも小型、低背化に貢献できると考える。【写真1】TJ101の外観
背景
TransferJet™とは、ソニーが提案し、TransferJet™ Consortiumで標準化された技術であり、誰もが簡単に安心して快適に使えることを目指し、「あえて飛ばない無線」をコンセプトに開発された近接無線転送技術である。データ転送したい相手に機器を直接かざすことにより、従来の無線技術の課題であった複雑な接続設定を不要にし、560Mbps(Max)で高速データ転送が可能である。 TransferJet™の主な特徴としては以下となる。(表1)中心周波数 | 4.48GHz(4.2 to 4.76GHz) |
---|---|
送信電力 | -70dBm/MHz以下(平均電力) |
転送レート | 560Mbps(Max) / 実効レート 375Mbps(Max) |
変復調方式 | DS-SS (Direct Sequence Spread Spectrum 直接スペクトラム拡散方式) |
通信距離 | 数センチ以下 |
トポロジー | 1-to-1( point-to-point ) |
・ 低い送信電力 : 送信電力を低くすることで、通信距離が短くなり、近く(数センチ)で通信を行う場合に障害物等の影響はほぼないと考えられ、通常の無線(BluetoothⓇ(注3),無線LAN等)で生じるフェージング(注4)等の影響はないと考えられる。従って、消費電力が低くなる、電波関連の法規制が容易にクリアでき、理論値に近いデータ転送速度が得られる。
・ 広帯域 : 送信電力は-70dBm/MHz以下と非常に低いが広帯域(560MHz)にする事でデータ伝送速度を上げることができる。1次変調にはπ/2 shift BPSK (2相位相偏移変調方式)、2次変調にDS-SS(直接シーケンススペクトラム拡散方式)を採用している。従って、低い送信電力で高いデータ転送速度が得られる。
・ 高周波 : 使用する4.48GHz帯はUWB(Ultra Wide Band)(注5)での使用が考えられている周波数で、世界各国で利用できる周波数帯域が異なるが、この4.48GHz帯は各国の法規制をクリアしている。日本では、微弱無線に適用され、諸外国(欧州:CE、米国はFCCなど)ではその国の電波規則に準拠する。従って、1モデルで、世界各国で使用可能となる。
・ 1対1接続 : 1対1接続で、通信距離が短い(数cm)ため、データ漏洩の可能性が低く、あらかじめ登録した機器のみに接続することも可能。従って、安全な通信が可能となる。
・ カプラ特性 : 放射電磁界を用いた従来型の無線アンテナではなく、誘導電界を用いている。TransferJet™用アンテナカプラは結合電極、共振スタブとグラウンドにより構成されており、近距離では高い利得を得るが、距離の2乗に比例して減衰する特徴を持つ。他の無線に対する干渉防止にも役立つ。
また、電界の縦波を利用するため、機器同士の向きを意識しないでかざしても利得を落とさずに通信が可能となる。
・ 広帯域 : 送信電力は-70dBm/MHz以下と非常に低いが広帯域(560MHz)にする事でデータ伝送速度を上げることができる。1次変調にはπ/2 shift BPSK (2相位相偏移変調方式)、2次変調にDS-SS(直接シーケンススペクトラム拡散方式)を採用している。従って、低い送信電力で高いデータ転送速度が得られる。
・ 高周波 : 使用する4.48GHz帯はUWB(Ultra Wide Band)(注5)での使用が考えられている周波数で、世界各国で利用できる周波数帯域が異なるが、この4.48GHz帯は各国の法規制をクリアしている。日本では、微弱無線に適用され、諸外国(欧州:CE、米国はFCCなど)ではその国の電波規則に準拠する。従って、1モデルで、世界各国で使用可能となる。
・ 1対1接続 : 1対1接続で、通信距離が短い(数cm)ため、データ漏洩の可能性が低く、あらかじめ登録した機器のみに接続することも可能。従って、安全な通信が可能となる。
・ カプラ特性 : 放射電磁界を用いた従来型の無線アンテナではなく、誘導電界を用いている。TransferJet™用アンテナカプラは結合電極、共振スタブとグラウンドにより構成されており、近距離では高い利得を得るが、距離の2乗に比例して減衰する特徴を持つ。他の無線に対する干渉防止にも役立つ。
また、電界の縦波を利用するため、機器同士の向きを意識しないでかざしても利得を落とさずに通信が可能となる。
当社では、BluetoothⓇ, 無線LANといったRF Moduleの商品開発を行ってきた。また、アンテナカプラについては早い段階より開発を行い、TransferJet™ Consortiumに基準カプラ(型番:WHA9400-1400F)として採用されている。
他にも、PC等といった製品向けに20mm×20mmサイズで高さ2.6mm品(型番:WHA9400-1626F)及び高さ3.2mm品(型番:WHA9400-1631F)カプラ等を商品化している。今回、TransferJet™用RF Moduleを開発することで、アンテナカプラからRF Moduleまでトータルでの商品展開を図りたいと考える。
他にも、PC等といった製品向けに20mm×20mmサイズで高さ2.6mm品(型番:WHA9400-1626F)及び高さ3.2mm品(型番:WHA9400-1631F)カプラ等を商品化している。今回、TransferJet™用RF Moduleを開発することで、アンテナカプラからRF Moduleまでトータルでの商品展開を図りたいと考える。
【写真2】
アンテナカプラ「WHA9400-1631F」
TJ101の特徴、特性(表2、図2)
今回開発したTJ101には、ソニー株式会社製TransferJet™通信対応LSI(型番:CXD3270GG)を実装している。CXD3270GGは第2世代品となる。第1世代品は、PCIおよびSDIOインターフェイスに対応していた。よって、PCI Expressインターフェイスに対応したModuleを開発するためには、別途ブリッジ回路を形成する必要があった。このブリッジ回路により、消費電力の増大、データ通信速度低下への影響が大きかった。CXD3270GGでは、LSI内部にPCI Expressのインターフェイス回路が集積され、別途ブリッジ回路が不要となった。
この結果、TJ101の消費電力は数百mWにまで削減され、データ伝送速度においても375Mbps(実効最大転送レート)に近い値となった。
ModuleのRF信号伝送路では、これまでに培ってきた高周波設計技術により、電磁界解析ソフト等を用いて、4.48GHz帯(4.2 to 4.76GHz)において良好な周波数特性を得るために最適化を行った。同様に、2.5Gbpsの高速シリアル伝送となる、PCI Expressインターフェイスの差動伝送線路においても電磁界解析ソフトにて最適化を行った。この様な基板設計を実施したことで、Moduleのスペクトラム特性は良好な結果となった。PCI Expressインターフェイスに関しても、弊社内でPHY Electrical Testを実施し、規格を満足していることが確認できた。認証関連では、ソニー以外の企業としては、初めてTransferJet™ Conformance TestのPHY(Physical Layer) / CNL (Connection Layer) Testを実施し、認証を取得している。PCL (Protocol Conversion Layer) 認証も取得しているため、採用メーカーはInteroperability TestとService Area Coverage試験のみ実施すれば、End Productの認証を取得することが可能である。また、日本国内微弱無線局規定の適合については、弊社アンテナカプラを使用し、第3者試験機関による、微弱電波設備性能証明を得ている。諸外国主要規制についても、米国(FCC Part 15 Subpart F), カナダ(IC RSS-220)の認証を取得済み、および欧州(EN302 065, EN301 489等)規格の適合確認済みである。
形状 | 30mm×26.8mm×4.5mm | Half-Mini Card : H2 Type |
---|---|---|
消費電流 | 250mA(Max) | 連続受信時、連続送信時 |
受信感度 | -59dBm (Max) | PER=1.0%, @Rate522 |
送信EVM | 10% (Max) | |
動作温度範囲 | -20℃~+75℃ |
【図2】 TJ101ブロック図
まとめ
当社では、アンテナカプラ、TransferJet™用RF Moduleの両方を提供できることから、トータルでのサポート対応が可能である。
ID情報といった小容量のデータ通信を行うNFC(Near Field Communication)技術と、TransferJet™は利用する周波数(TransferJet™ : 4.48GHz帯、NFC : 13.56MHz帯)が異なるため同一システムでの連携、共存が可能と考えていることから、今後コンボ商品等の開発を順次進めていく予定である。また、USBインタフェイスに対応したTransferJet™ Moduleの開発も進めて行き、さらなる商品展開を図って行くことでTransferJet™の市場拡大に努めていく。
注1 : PCI Express : 2002年にPCI-SIGによって策定されたパソコン向けシリアル転送インターフェイス。
注2 : TransferJet™及びTransferJet™ロゴは、ソニー株式会社の商標。
注3 : BluetoothⓇは、Bluetooth SIG, Inc.が所有する登録商標。
注4 : フェージング : 無線通信において、反射などにより、時間差をもって到達した電波が干渉し合うことにより電波レベルの強弱に影響を与える現象。
注5 : UWB : 超広帯域無線(Ultra Wide Band)搬送波・広帯域変調を用いた、近距離高速通信が可能な無線技術。Wireless USBの基本技術であり、使用周波数は3.1~10.6GHzとなり、TransferJet™で使用する4.48GHz帯はBand3になる。
筆者:SMK株式会社 開発センター
出典:電波新聞 2011年5月12日 特集「ワイヤレス通信技術」
出典:電波新聞 2011年5月12日 特集「ワイヤレス通信技術」