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SMK Bluetoothモジュール最新技術

1.はじめに

生活環境のあらゆる場所に情報通信環境が整備され、利用者がそれを意識せずに利用できるユビキタス社会の実現に向けて、民生機器・産業機器の両市場分野においてワイヤレス伝送に対するニーズが高まりをみせている。要求される伝送レートや搭載機器の用途などに応じて各種の無線規格が策定されつつあるなかで、デジタル機器の近距離高周波無線規格であるBluetooth®は、各種OSの対応や携帯電話機器への搭載が進んだことにより、多様な分野で普及が進んでいる。

2.技術動向

Bluetooth®は、免許なしで自由に使用することが可能な2.4GHz帯を利用した世界標準無線規格で、数mから数十m程度の近距離無線通信を実現する。周波数ホッピング・スペクトラム拡散方式(FHSS)によって通信しているため通信妨害に強く、盗聴されにくい。また、消費電力が少ないことからバッテリー駆動のモバイル機器の通信に適しているという特長をもつ。Bluetooth®仕様 は1999年7月にVer.1.0が公開されて以来、バージョンアップを重ねている。2009年4月には、Bluetooth® Core Specification v3.0がリリースされた。これは、無線LAN規格IEEE 802.11のMAC/物理層を利用し、通信速度24Mbpsを実現するHS(High Speed)をオプションとしている。また、2009年12月には、Bluetooth® Low Energy技術の物理層を規定したBluetooth® Core Specification v4.0がリリースされ、従来と比べて大幅な省電力化を実現した。Bluetooth®ではシリアルポートの仕様や、オーディオ、画像や電話帳といったアプリケーションの伝送仕様をプロファイルとして標準化してあり、機器のワイヤレス・アプリケーションの拡充や高い相互接続性を容易に実現できる規格となっている。

3.製品概要

SMKでは用途(プロファイル)を限定し、必要な上位ソフトウェア・スタックを全てモジュール内に搭載した専用アプリケーション・モジュールを中心に、各種Bluetooth®モジュールの商品化を進めている。プロファイルが搭載されていないモジュールでは、セットメーカー側で上位のソフトウェア・スタックを組み込む必要があり、Bluetooth®の専門的な知識と技術を必要とするなど、開発負荷が大きい。
本稿ではこれまで開発を進めてきたBluetooth®オーディオモジュール「BT505A」、Bluetooth®のSPP(Serial Port Profile)をサポートしたBluetooth®シリアルポートアダプタ「BT301シリーズ」、SPPと、DUN(Dial Up Network)をサポートしたBluetooth®シリアルポートアダプタ「BT304シリーズ」について紹介する。また2013年5月にはSPPに加えて、iOS(※1)搭載機器との接続を可能するiAP(※2)プロトコルをサポートした「BT401シリーズ」の量産を開始する。今回は、その開発経緯やその技術的背景を紹介する。

(1)Bluetooth®オーディオモジュール BT505A(写真1)
BT505Aでは、携帯電話やポータブルオーディオ機器からのオーディオ信号を受信、再生する用途として、A2DP (Advanced Audio Distribution Profile)のプロファイルをサポートしている。また、オーディオ機器のワイヤレス操作などの用途には、AVRCP(Audio/Video Remote Control Profile)をサポートしている。本モジュールは、著作権保護SCMS(Serial Copy Management System)-Tに対応しているので、ワンセグ機能搭載携帯電話からの音声受信が可能である。また、携帯電話の着信に対して、ハンズフリーが可能なHSP(Headset Profile)/HFP(Hands-free Profile)にも対応している(表1、図1)。


【 写真1】Bluetooth®オーディオモジュール「BT505A]
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【 図1】BT505Aシステム例
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【表1】概略仕様
項目仕 様
シリーズ名BT301/BT301CBT304/BT304CBT505ABT401/BT401-AP1
Bluetooth®仕様Ver2.0+EDR準拠Ver2.1+EDR準拠Ver2.0+EDR準拠Ver3.0(EDR対応)
Power ClassClass2Class2Class2Class2
対応プロファイル/プロトコルGAP/SPPGAP/SPP/DUNA2 DP/AVRCP/HSP/HFPGAP/SPP、iAP(※2)プロトコル(BT401-AP1のみ)
インターフェイスUARTUARTUART
動作電源電圧DC2.7~3.6VDC2.7~3.6VDC2.8~3.6VDC2.7~3.6V
外形寸法23×11×2 mm23×11×2 mm26×12.8×2.5 mm25×11×2.3 mm
モジュール形状面実装タイプ(BT301)/コネクタ接続タイプ(BT301C)面実装タイプ(BT304)/コネクタ接続タイプ(BT304C)面実装タイプ面実装タイプ
認証Bluetooth®SIG認証、工事設計認証(BT301Cのみ)Bluetooth®SIG認証、工事設計認証(BT304Cのみ)Bluetooth®SIG認証Bluetooth®SIG認証、工事設計認証、FCC・IC・CE(BT301Cのみ)


(2)Bluetooth®シリアルポートアダプタBT301、BT304シリーズ (写真2)
Bluetooth®シリアルポートアダプタBT301シリーズは、Bluetooth®のSPPを搭載しており、既存のシリアル通信機器を接続するケーブルのワイヤレス化を行うことが可能である (表1、図2)。また、シリアルポートアダプタでは、携帯電話等を介した屋外でのダイアルアップ接続機能も求められることが多い。このため、Bluetooth®のDUNもサポートしたBT304シリーズを開発した (表1、図3)。DUN動作では、DUN DT(Data Terminal)をサポートしている。DUN GW(Gateway)に対応した機器(携帯電話、モデムなど)とBluetooth®接続し、ワイヤレスでのダイアルアップ通信を実現する。 。


【写真2】
Bluetooth®シリアルポートアダプタ「BT301/304シリーズ]
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【図2】BT301/BT304シリーズシステム例
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(3) Bluetooth® SPPプロファイル対応
Bluetooth®コンプリートモジュールBT401シリーズ

2013年5月に、SPPプロファイル対応Bluetooth®コンプリートモジュールBT401シリーズの量産を開始する(表1、写真3)。
BT401はBT301/BT304シリーズと同様にBluetooth®機能を使ってスマートフォンやタブレット端末のデータ通信に使用するSPPをサポートする。
BT401-AP1はSPPに加えてiOS(※1)搭載機器との接続も可能としているiAPプロトコルにも対応している。BT301/BT304シリーズの接続対象機器として、スマートフォンの急速な普及に伴い、iPhone(※3)と接続するニーズが急増してきた。しかし、Apple iOS(※1) のBluetooth®仕様では、シリアルデータ通信をiAP(※2)で行い、SPPには対応していない。そのため、iPhone、iPad(※3)などのApple製品とBT301/BT304は、接続ができなかった。そこで今回開発したBT401-AP1はiAP(※2)プロトコルをサポートした。
BT401-AP1にApple authentication co-processorを接続することで、iOS(※1)用アクセサリとして動作をする仕様となっている。
なお、BT401-AP1を使用する場合は、Apple社のMFiライセンスプログラムへの加入が必要である。
BT401シリーズでは、BT301/BT304と同様にプロファイルと自社開発した上位ソフトウェアをモジュールに組み込んであり、シリアルポートをエミュレートして動作する。従って、シリアル通信を行う殆どのアプリケーションにおいて、ケーブルをそのままBT401シリーズ同士のBluetooth®通信に置き換えることが可能である。また、同じプロファイルに対応した他のBluetooth®機器と接続することも可能である。BT401-AP1では、iPhone、iPad(※3)のようなApple製品と接続可能である(図4)。これにより、既存システムのBluetooth®への置き換えを低コストで実現できる製品であると考えている。
本製品は国内電波法に基づく工事設計認証を取得済みであり、本モジュールを組み込んだ製品の場合、ユーザで別途取得する必要はない。これに加えてFCC(米国)・IC(カナダ)・CE(欧州)の各種認証も取得済みである。また、Bluetooth®SIG認証を取得済みであり、製品出荷までにユーザでSIGメンバー登録を行い、EPL登録することで、Bluetooth®ロゴを使用することが可能である。このため、認証を取得するための開発コスト、開発期間の短縮に貢献する。


【図3】BT304シリーズ システム例
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【写真3】SPPプロファイル対応
Bluetooth®コンプリートモジュール
「BT401シリーズ]
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【図4】BT401-AP1 システム例(クリックで拡大)

4.今後の展開

SMKではBluetooth®標準のアプリケーションソフトを拡充し、様々な市場ニーズに対応すべく、商品展開の多様化を図っている。本稿ではこれまで開発してきたBluetooth®モジュールを中心に説明を行った。現在、モバイル機器との接続やヘルスケア・フィットネスなどの分野で展開が期待されており、従来のBluetooth®モジュールと比べて大幅に省電力化されたBluetooth® Low Energy技術を利用したモジュールの開発も進めている。
 Bluetooth®は近距離無線の規格であるが、近年は多種多様な市場ニーズに対しIEEE802.11無線LAN、WiMAXなど様々な無線規格が生まれている。SMKにおいても各規格モジュールの商品化を進めるとともに、市場ニーズに合った各種無線規格のコンボモジュールを順次開発していく計画である。

注) Bluetooth®は、Bluetooth SIG, Inc.が所有する登録商標です。
※1 Ciscoの米国およびその他の国における商標または登録商標であり、ライセンスに基づき使用されている。
※2 Apple社のiPod Accessory Protocolの略。 ※3 iPhone、iPadは、Apple Inc.の商標である。

注) BluetoothⓇは、Bluetooth SIG, Inc.が所有する登録商標です。

筆者:SMK株式会社 開発センター 

出典:電波新聞 2013年5月9日 特集「ワイヤレス通信技術」