電線対基板圧着コネクタの動向
コネクタ動向
ITモバイル製品に代表される小型機器は一層の小型化を目指している。これら指向は、半導体技術や表面実装技術の改良、革新により進化を遂げている。これら小型化の技術的な限界到達点を決める要因の一つはインターフェースであるコネクタにもある。したがって コネクタの小型化、軽量化はその重要性を増している。この小型化要求に対応する為、限られた狭いスペースで自由に配線が出来るFFC/FPC(Flexible Flat Cable / Flexible Printed Circuit)が脚光をあび、接続するコネクタも狭ピッチ化、低背化(低実装高さ)が急速に発展してきた。一方で電源接続等、高容量の伝送路を接続する要求も大きく、FFC/FPCに比べ高容量伝送に優位性のあるケーブルによる接続が必要となる用途も拡大してきている。 ケーブルコネクタも小型化要求に対応する必要となってきた。(表1)
SMKでは小型電子機器の用途に適した小型ケーブルコネクタを開発し、商品化して対応している。これら小型コネクタを紹介する。
今回開発の小型コネクタの結線方式として圧着/圧接方式採用している。まず圧着/圧接の結線方式について説明する。
【 表1 小型・低背・狭ピッチコネクタの技術動向】
圧着/圧接結線方式
①圧着方式コンタクトの結線部圧着バレルの中に被覆を剥いだケーブルを入れ、工具により大きな圧縮荷重を加え両者を塑性変形させることにより、永久接続を得るものである。
圧着結線方式は各種電線に対応する適応性に極めて優れている。(図1)
②圧接方式
圧接方式コネクタは電線と接続するコンタクト形状がU型をしていることから、Uコンタクト、またはIDC(Insulation Displacement Contact)と呼ばれている。
圧着加工とは異なり、ケーブルの被覆を剥がずに多数の結線を一度に行う方法で結線可能な方式である。工具の機能はケーブルをコンタクト圧接部に押し込むことである。
結線の原理はUコンタクト先端でケーブル被覆を突き破りコンタクト梁のたわみに弾性エネルギーと、これに伴いケーブル芯線の塑性変形により、接触が維持されることによる。(図2)
【図1 圧着構造】
【図2 圧接構造】
SMK開発小型ケーブルコネクタ
モバイル機器は年々多機能、小型、薄型化しており、機能が増えれば電子部品の数は増えるが機器本体の小型化、薄型化によって部品実装空間は小さくなる。つまり実装部品の省スペース化、特に実装高さの均一化が重要となってきている。ケーブルコネクタは、製品サイズが採用の障害であった。 例えば、携帯機器のバッテリー接続は蓄電容量やライフを考慮してユーザーが取り替え易い、押し当て構造のコネクタによる接続が主流であったが、バッテリーの改善で取り替えの必要性は薄れ、信頼性やサイズが重要視されている。
サイズや機器設計のフレキシビリティーさからケーブルコネクタが注目されており、省スペース化が最優先課題となっている。
SMKではこれら要求に対応する為、実装高さ1.2mmの圧着コネクタ、実装高さ0.9mm の圧接コネクタを開発、商品化した。これら小型コネクタについて紹介する。
圧着コネクタ
【図3 実装高さ1.2mm圧着コネクタ】
・極数 :2~5極
・ケーブルピッチ(コンタクトピッチ) :1.2mm
・製品サイズ (横幅×縦奥行き×嵌合高さ): 5.4×4.25×1.2mm
・適合電線 :芯線AWG28~30 被覆外径 φ0.5~φ0.63mm
・接触抵抗 :20mΩ以下
・耐電圧 :100MΩ以上
・耐電圧 :500V AC
・定格 :2A 50V AC/DC
特徴)
嵌合後にケーブルは基板に対し水平な状態とし、狭空間内の配線が可能としながら圧着ハウジングを上方向から挿入とする構造により基板への配置位置の自由度を考慮した。
電源用途への対応も可能とする為、各種電線に対応する適応性に優れている圧着結線方式採用しAWG28の結線を可能とし2A対応を実現した。
また嵌合部に独自の接触バネ形状を採用し、低背コネクタでありながら接触信頼性及びプラグピンとの接触長(ワイピング長)を最大限確保できる構造となっている。(図4)
【図4 ターミナル構造図】
圧接コネクタ
開発した実装高さ0.9mm圧接コネクタ(SMKシリーズ名 ID-02)の概要は以下の通りである。(図5)・極数 :2極専用
・ケーブルピッチ(コンタクトピッチ) :0.75mm
・製品サイズ (横幅×縦奥行き×嵌合高さ): 4.95×1.8×0.9mm
適合電線 :芯線AWG32 被覆外径 φ0.4±0.03mm
・接触抵抗 :20mΩ以下
・耐電圧 :100MΩ以上
・耐電圧 :250V AC
・定格 :1A 30V AC/DC
特徴)
嵌合方向および嵌合後ケーブル状態は先の圧着コネクタと同じとし、省スペースへの対応とした。 結線方式は圧接方式を採用、圧接方式はコンタクトをケーブルに押し込み結線を完結でき、コンタクト挿入部を確保できれば結線可能な方式である為、圧着コネクタに対し大幅な省スペース化が可能である。
ただし、従来の圧接方式はケーブルを押し付ける工具の挿入のための開口部が必要であり、ケーブル抜け強度確保の為にカバーケースやストレインリリーフといったケーブル保持機構が必要であった。
本製品では、従来の考え方を変え、ケーブルをあらかじめハウジングのケーブル収納穴に挿入した後、圧接コンタクトを挿入する構造とした。これによりケーブルはハウジング コンタクト量部品より押さえつけられることとなり、ケーブル保持部品は不要となっている。また圧接コンタクトは手前/奥の2箇所のダブル構造とし信頼性を確保した。
これらケーブル保持構造により、抜け強度は大きく改善することが出来た。これにより小型コネクタのデメリットであった操作性、特に嵌合解除についてはケーブル引っ張りにより解除を行うといった操作にも耐えうる製品をなった。
【図5 実装高さ0.9mm圧接コネクタ構造】
まとめ
SMKは今後更に加速するであろう機器の省スペース化に対応できるケーブルコネクタについて様々なアプローチで商品を開発、バリエーション展開を進める。筆者:SMK CS事業部
出典:電波新聞 2010年2月4日 特集「コネクタ技術」