メモリーカードコネクタの開発動向
はじめに
我々の生活の中における携帯電話やDSCやノートパソコンなどのモバイル機器は、明確なカテゴリー分けが出来ないくらい多種多様な製品が開発されている。また、カメラ機能や通信機能を備えるなど高機能化が進んでいる。一方使用されるコネクタにおいても、モバイル機器の多機能化による使用部品の増加に伴い、従来以上の小型化が求められている。また、画像、音楽や動画ファイルの保存などストレージ機能としてのメモリカードの重要度が高まってきている。当社ではこのような市場動向を踏まえて、メモリカード用コネクタの開発と技術構築に努めている。本稿では、当社で取り組んでいるカード用コネクタの技術内容とmicroSDカードとSIMカード用コネクタの製品概要について説明する。技術動向
【1. 小型低背化】コネクタの低背化を実現するために、成形部品の薄肉化が必要となる。薄肉化することで、強度低下(とりわけウェルド)や反り、ショートショット等が懸念されるが、これらの懸念事項の対策として、事前に流動解析<図1>や反り解析を行い、コネクタの形状及びゲート位置など金型構造の最適化を図っている。
【図1 流動解析】
一方、小型化(省スペース化)に対しては、ある程度のコネクタ高さを確保する必要はあるものの、カードの下に他の部品を実装することが可能なヘッダータイプや、カード毎のスロットを積み上げる「スタッキング構造」の複合タイプなど省スペースのコネクタを開発し、セットの高密度実装に対応している<図2>。
【図2 省スペース化】
【2.CAE解析】
当社では上述した流動解析、反り解析に加え、構造解析や動解析などさまざまなCAE解析ツールを利用して、開発納期短縮と設計品質向上に努めている。近年のハードウェアの性能向上に伴い、複雑な解析でも短時間で計算できるようになっているため、構造解析においては、主対象となる部分のみで解析を行うのではなく、実使用に近い状態で解析を行うことで解析精度向上を図っている<図3>。また、動解析においては、落下衝撃時の基板剥離を予防するために、半田付け部の位置や形状を最適化したり、瞬断発生を抑制するために信号端子の形状の検討を行っている。
【図3 構造解析手法の改善(応力図)】
【 写真1 microSDカード用コネクタ (ヒンジタイプ【左】、PUSH-PULLタイプ【中】、【右】)】
①ヒンジタイプ<写真1-左>
本品は、高さ1.5mm、幅12.6mm、奥行14.5mmのヒンジタイプのコネクタである。シールドカバーの回転及びスライドよりカードの着脱するため、小スペースでカードの着脱が可能である。さらに、スライド位置に応じてクリック感を持たせることにより、コネクタの操作性を高めている。また、ヒンジタイプにおいては、ESD/EMC対策として、シールドカバーのグランド設置が課題となるが、ハウジング側面部にグランド接続部を設けることで、シールドカバーロック時に確実にグランド接続できる構造としている。
②PUSH-PULLタイプ<写真1-中、右>
<写真1-中左>は、高さ1.65mm、横幅11.4mm、奥行き12.9mmと小型かつ低背タイプである。信号端子の接点荷重は、同タイプ既存品の1.5倍以上の設定で安定した接触を実現している。また、検知スイッチ位置をカード挿入方向に配置している為、カード寸法による影響が少ない構造となっている。その他、シールドカバー上面にバネ形状を設けてカードの保持を行い、側面にはハーフロック用のバネを設けることで、クリック感の発生と個品点数削減を実現している。 <写真1-中右>は、高さ1.47mm、幅11.35mm、奥行き11.25mmと上記コネクタをさらに低背、小型化した製品である(上記コネクタとの体積比:22%低減)。また、カードのロック機構に関しては、カードの着脱を容易に行えるハーフロックタイプと、カードの抜け強度を高めたハードロックタイプの2タイプを用意し、セットの用途に応じて選択可能となっている。
【写真4 複合タイプコネクタ
(microSD/SIMカード)】
①高容量・高速伝送カードへ対応するために、インタフェースコネクタ開発などで培った当社の高速伝送に関するノウハウを活用し、伝送特性を高めたコネクタの開発
②操作性向上を目指して簡易なイジェクト機構を考案し、セット設計の自由度向上に貢献できる小型で高機能かつ廉価なコネクタの開発
筆者:SMK株式会社 CS事業部
出典:電波新聞 2010年2月4日 特集「コネクタ技術」
【図2 省スペース化】
当社では上述した流動解析、反り解析に加え、構造解析や動解析などさまざまなCAE解析ツールを利用して、開発納期短縮と設計品質向上に努めている。近年のハードウェアの性能向上に伴い、複雑な解析でも短時間で計算できるようになっているため、構造解析においては、主対象となる部分のみで解析を行うのではなく、実使用に近い状態で解析を行うことで解析精度向上を図っている<図3>。また、動解析においては、落下衝撃時の基板剥離を予防するために、半田付け部の位置や形状を最適化したり、瞬断発生を抑制するために信号端子の形状の検討を行っている。
【図3 構造解析手法の改善(応力図)】
製品紹介
【microSDカード用コネクタ】【 写真1 microSDカード用コネクタ (ヒンジタイプ【左】、PUSH-PULLタイプ【中】、【右】)】
本品は、高さ1.5mm、幅12.6mm、奥行14.5mmのヒンジタイプのコネクタである。シールドカバーの回転及びスライドよりカードの着脱するため、小スペースでカードの着脱が可能である。さらに、スライド位置に応じてクリック感を持たせることにより、コネクタの操作性を高めている。また、ヒンジタイプにおいては、ESD/EMC対策として、シールドカバーのグランド設置が課題となるが、ハウジング側面部にグランド接続部を設けることで、シールドカバーロック時に確実にグランド接続できる構造としている。
<写真1-中左>は、高さ1.65mm、横幅11.4mm、奥行き12.9mmと小型かつ低背タイプである。信号端子の接点荷重は、同タイプ既存品の1.5倍以上の設定で安定した接触を実現している。また、検知スイッチ位置をカード挿入方向に配置している為、カード寸法による影響が少ない構造となっている。その他、シールドカバー上面にバネ形状を設けてカードの保持を行い、側面にはハーフロック用のバネを設けることで、クリック感の発生と個品点数削減を実現している。 <写真1-中右>は、高さ1.47mm、幅11.35mm、奥行き11.25mmと上記コネクタをさらに低背、小型化した製品である(上記コネクタとの体積比:22%低減)。また、カードのロック機構に関しては、カードの着脱を容易に行えるハーフロックタイプと、カードの抜け強度を高めたハードロックタイプの2タイプを用意し、セットの用途に応じて選択可能となっている。
【SIMカード用コネクタ】
【 写真2 SIMカード用コネクタ (PUSH-PUSHタイプ【左】、トレイタイプ【右】)】
①Push-Pushタイプ<写真2-左>
本品は高さ1.4mm、幅17.2mm、奥行き25.8mmと同タイプにおいて、業界最低背・省スペースのコネクタである(イジェクト量3mm)。シールドカバーには8箇所のグランド部を設けることで、シールド性の強化およびコネクタ実装強度アップを図っている。また、カード検出用のスイッチは2点接触構造を採用し、接触信頼性を向上させている。また、信号端子の極数は6極と8極の2種類を選択応可能である。
②トレイタイプ<写真2-右>
本品はトレイを使用してカードを挿抜するタイプであり、9.5mmのイジェクト量を確保している。外形は、高さ1.75mm、幅17.3mm、奥行き25.8mmである。また、トレイに高耐熱の樹脂を使用しているため、トレイをコネクタ部に組み込んだ状態でリフロー実装が可能である。そのため、従来行なっていた実装後の組み込み作業が不要となり、セット側の組立工数の削減に貢献している。また現在、トレイの取り付け方向が上下逆のリバースタイプを含めて、低背化した製品を現在開発中である。
本品は高さ1.32mm、幅16mm、高さ18.1mmと業界最低背クラスの製品である。信号端子にダブル接点構造を採用することに加え、接点荷重は同タイプ既存品の1.5倍以上の設定で安定した接触を実現している。また、上記Push-Pushタイプと同様に、信号端子の極数は6極と8極の2種類を選択応可能である。
④PUSH-PULL(SIDE IN)タイプ<写真3-右>
本品は高さ1.55mm、幅26.6mm、奥行き14.1mmとSIDE INタイプのコネクタにおいては、業界最低背クラスを実現している。SIDE INタイプ、すなわち正規にはカードの長手方向から挿入するコネクタにおいては、誤ってカード短手方向から誤って挿入することが可能である。その際信号端子の変形が懸念されるが、独自の端子構造を採用することにより、端子変形防止構造を備えた上で、低背化を行っている。
【 写真2 SIMカード用コネクタ (PUSH-PUSHタイプ【左】、トレイタイプ【右】)】
本品は高さ1.4mm、幅17.2mm、奥行き25.8mmと同タイプにおいて、業界最低背・省スペースのコネクタである(イジェクト量3mm)。シールドカバーには8箇所のグランド部を設けることで、シールド性の強化およびコネクタ実装強度アップを図っている。また、カード検出用のスイッチは2点接触構造を採用し、接触信頼性を向上させている。また、信号端子の極数は6極と8極の2種類を選択応可能である。
②トレイタイプ<写真2-右>
本品はトレイを使用してカードを挿抜するタイプであり、9.5mmのイジェクト量を確保している。外形は、高さ1.75mm、幅17.3mm、奥行き25.8mmである。また、トレイに高耐熱の樹脂を使用しているため、トレイをコネクタ部に組み込んだ状態でリフロー実装が可能である。そのため、従来行なっていた実装後の組み込み作業が不要となり、セット側の組立工数の削減に貢献している。また現在、トレイの取り付け方向が上下逆のリバースタイプを含めて、低背化した製品を現在開発中である。
【写真3 SIMカード用コネクタ(PUSH-PULLタイプ【左】、PUSH-PULL[SIDEIN]タイプ【右】)】
③PUSH-PULLタイプ<写真3-左>本品は高さ1.32mm、幅16mm、高さ18.1mmと業界最低背クラスの製品である。信号端子にダブル接点構造を採用することに加え、接点荷重は同タイプ既存品の1.5倍以上の設定で安定した接触を実現している。また、上記Push-Pushタイプと同様に、信号端子の極数は6極と8極の2種類を選択応可能である。
④PUSH-PULL(SIDE IN)タイプ<写真3-右>
本品は高さ1.55mm、幅26.6mm、奥行き14.1mmとSIDE INタイプのコネクタにおいては、業界最低背クラスを実現している。SIDE INタイプ、すなわち正規にはカードの長手方向から挿入するコネクタにおいては、誤ってカード短手方向から誤って挿入することが可能である。その際信号端子の変形が懸念されるが、独自の端子構造を採用することにより、端子変形防止構造を備えた上で、低背化を行っている。
【複合タイプコネクタ】
①microSD/SIMカード<写真4>
microSDカードとSIMカードスロットのスロットを上下に並べた2スロットタイプの複合カードコネクタである(microSD:検知スイッチ付)。外形は、高さ3.3mm、横幅14mm、奥行き30.15mmである。microSDカード部は、奥行きが短いヘッダータイプ構造の為、カード操作時のつまみ代を充分に確保することが可能であり、カードの操作性を考慮した構造になっている。また、SIMカードにおいては、上述のSIDEINタイプのコネクタ同様、カード誤挿入時の端子変形に対して防止構造を備えている。
①microSD/SIMカード<写真4>
microSDカードとSIMカードスロットのスロットを上下に並べた2スロットタイプの複合カードコネクタである(microSD:検知スイッチ付)。外形は、高さ3.3mm、横幅14mm、奥行き30.15mmである。microSDカード部は、奥行きが短いヘッダータイプ構造の為、カード操作時のつまみ代を充分に確保することが可能であり、カードの操作性を考慮した構造になっている。また、SIMカードにおいては、上述のSIDEINタイプのコネクタ同様、カード誤挿入時の端子変形に対して防止構造を備えている。
【写真4 複合タイプコネクタ
(microSD/SIMカード)】
今後の展開
上記開発品のレパートリー拡充と共に、下記内容に注力したメモリカード用コネクタの開発を展開していく。①高容量・高速伝送カードへ対応するために、インタフェースコネクタ開発などで培った当社の高速伝送に関するノウハウを活用し、伝送特性を高めたコネクタの開発
②操作性向上を目指して簡易なイジェクト機構を考案し、セット設計の自由度向上に貢献できる小型で高機能かつ廉価なコネクタの開発
筆者:SMK株式会社 CS事業部
出典:電波新聞 2010年2月4日 特集「コネクタ技術」