LED照明用コネクタの技術
開発背景
発光ダイオード(LED)を使用したLED照明は、CO2の削減や地球環境保護、低消費電力、長寿命などを特徴とする環境に優しい照明として、グローバルな普及拡大が見込まれている。特に日本では、2010年4月に施行された改正省エネ法への対応策として、LED照明を導入する企業が増えてきた。このような状況下、LED照明市場はその技術とともに進化している。
従来のLED照明は、電源基板とLEDモジュール基板によって構成され、それぞれの基板を少量生産に対応した手はんだによるケーブルでの接続が多くみられた。
しかし、最近では工程の簡略化や品質のバラツキ解消のため、コネクタ接続に切り替えるニーズが高まり、生産数の増大とともにLED照明用コネクタ市場が本格的に立ち上がりつつある。LED照明のコネクタ搭載率は、LED電球および、ベースライトの増加とともに、今後上昇していくことが予想されている。
SMKでは、5年前からLED照明市場に着目し、スポット照明用のLEDモジュール接続用コネクタを商品化した。その後、LED電球用コネクタおよび、LEDベースライト用の基板間接続用コネクタを製品化し、2010年度から量産を開始。ライン照明用や直管形LED蛍光灯用も新製品の立ち上げを計画している。
ベースライト用コネクタは、水平嵌合タイプ、ブリッジタイプのほか、SMKオリジナル製品として、LEDをより狭い間隔で配置できる構造のコネクタも開発している。
開発にあたっては、IEC規格や電気用品安全法(以下電安法とする)の規定を考慮し、安全性および耐熱性にも充分配慮した信頼性の高いコネクタの開発に力を入れており、以下にその取り組みについて紹介する。
LED照明用コネクタの技術
LED照明器具の電球型、ダウンライト型、直管型など、各種の管球形状に対応したコネクタを提供する上で、それぞれの製品に共通した特徴を挙げる。
まず、日本の電安法が定める空間距離,沿面距離(絶縁体表面に沿った距離)を適切に確保するなど(表)、照明器具に適用される各国・各得意先の安全基準を考慮した設計を行っている点である。一般にLEDの実装には、ヒートシンクの役割を兼ねて、熱伝導性に優れたアルミ・アルミナ(酸化アルミ)製メタル基板を用いることが多い。これら設計上考慮する点、および、その開発製品について、以下に述べる。
線間電圧または対地電圧(V) | 空間距離(沿面距離を含む)(mm) | |||
電源電線、出力側電線の取付け部以外の部分 | ||||
極性が異なる充電部間 | 充電部とアースするおそれのある非充電金属部または人が触れるおそれのある非金属部の表面との間 | |||
固定している部分であって、じんあいが侵入し難く、かつ、金属粉が付着し難い箇所 | その他の箇所 | 固定している部分であって、じんあいが侵入し難く、かつ、金属粉が付着し難い箇所 | その他の箇所 | |
50Ω以下のもの | 1.2 | 1.5 | 1.2 | 1.2 |
50を超え150以下のもの | 1.5 | 2.5 | 1.5 | 2.0 |
150を超え300以下のもの | 2.0 | 3.0 | 2.0 | 2.5 |
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先述したが、電安法では、動作電圧による空間距離,沿面距離が制定されている。そのため、コネクタを設計する上では、①コネクタの隣接端子間、②基板端面からコネクタ端子間、③メタル基板を固定する金属シャーシからコネクタ端子間の空間距離,沿面距離を考慮し、それらを確保するためのコネクタのマウント位置やシャーシ形状の検討が必要であり、当社では最優先マターとして取り入れている。以下にこれら考慮し開発したコネクタを紹介したい。
写真1は、LED電球用のカードエッジタイプコネクタ[LT-5シリーズ]の外観写真である。LED実装基板にLEDパッケージとともにはんだ実装し、電源制御基板をコネクタに直接差し込んで接続するワンピースタイプのカードエッジコネクタである。
ハーネスレスでの組立を実現し、セットメーカーでの手はんだの作業ばらつき回避と組立工数の削減に貢献する製品である。
【写真1】カードエッジタイプコネクタ「LT-5シリーズ」
【図】LT-5シリーズ空間・沿面距離検討斜視図
(2)LEDの発熱への対応
コネクタは、耐熱に考慮し、LEDと同時にメタル基板にリフロー実装が可能な高耐熱性樹脂を採用し、プレス品にも高温での応力緩和特性に優れた材料を採用している。一部の製品では、使用温度範囲の上限を125℃と設定し、高耐熱要求に対応している。
LEDの発熱により生じる点灯時の熱膨張と消灯時の収縮(膨張からの戻り)を、最大2mmまで吸収可能な構造のフローティングタイプのコネクタも開発し提案している。
10年以上にわたって使用される事を前提とした加速度試験により信頼性を確認し、LED素子の寿命と同レベルの長期信頼性を確保している。また、基板上のLED配置や基板の配置、組立に対応する必要もある。
写真2は、ベースライト照明用のブリッジタイプコネクタ[LT-2シリーズ]の外観写真である。LEDとソケットを実装させた基板を平面上に並べ、上方向からプラグを挿入するトップエントリー方式のコネクタである。セットメーカーでの基板の配置やコネクタの接続が容易であり、作業性の向上に貢献する。基板端上部のプラグ裏面をピン露出のない構造としたことにより、メタル基板使用時においても、空間距離および、沿面距離はそれぞれ3mm以上を確保した。
本コネクタは、基板間の組立時ズレ最大2mmまで吸収し、実装時のズレや基板の熱膨張にも対応している。
【写真2】ブリッジタイプコネクタ「LT-2シリーズ」
上述したポイント以外にも拡散を考慮したセット設計を妨げるものとして、LED光の遮光がある。コネクタの高さや面積で遮光してしまうと本来のセットスペックを満足できなくなるため、コネクタへの小型・低背化要求も多い。
LEDモジュールの薄型化にともない、LED光拡散の妨げや影にならない低背コネクタの開発も進めている。
写真3は、ベースライト照明用の水平嵌合タイプコネクタ[LT-1シリーズ]の外観写真である。
[LT-1シリーズ]は、LEDとともに実装されたプラグ,ソケットで基板間を水平に連結するコネクタである。
挿入方向は水平に加え斜め(最大30度)からの嵌合を可能とし、セットメーカーでの組立性向上に貢献する。プラグ,ソケットをそれぞれ基板端から突出させ、オーバーラップさせて嵌合することにより、メタル基板使用時においても空間距離および、沿面距離3mm以上を確保した。実装高さは1.6mmの低背コネクタである。
写真4は、ベースライト、ライン照明用の基板対電線ボトムタイプコネクタ[LT-6シリーズ]の外観写真である。
[LT-6シリーズ]は、LED実装基板にプラグコネクタを貫通実装し、基板背面からソケットケーブルを挿入するボトムタイプのコネクタである。LED実装基板間および、電源制御基板からケーブルで接続する。
また、ソケットはプラグに対して左右どちら側からも基板と水平方向に挿入可能な構造にしたことにより、配線の自由度を高めた製品としている。プラグとソケットの嵌合部はフルロック構造とし、不完全挿入や不用意な抜けを防止する安全性にも配慮した製品である。ボトム接続(基板上のピンコネクタに基板の裏側からソケットコネクタを嵌合できる方式)の採用により、LED実装側の高さは0.9mmの低背化を実現した。
なお、直管形LED蛍光灯用コネクタなどでは、さらに薄いコネクタの要求もあり、それに応える新規コネクタの開発も進めている。
【写真3】水平嵌合タイプコネクタ「LT-1シリーズ」
【写真4】基板対電線ボトムタイプコネクタ「LT-6シリーズ」
今後の取り組み
2011年7月に公布された「電気用品安全法施行令の一部を改正する政令」より、「エル・イー・ディー・ランプ」,「エル・イー・ディー・電灯器具」が電気用品安全法の対象に入り、来年7月の施行に向け動いている。LEDの高効率化,高出力化が進む中で電源供給となるコネクタのあり方も次第に変化している。
今後も市場のニーズに応えたレパートリーの拡充を進めていくとともに、当社独自の設計を取り入れた製品を開発することで、ユーザーの要求する特性や信頼性を満たし、セット本体の品質向上に貢献できる製品開発を進めていきたいと考える。
SMK株式会社 CS事業部
出典:電波新聞 2011年12月1日 特集「新しい照明技術」