車載用同軸コネクタ(VC-2シリーズ)の技術
はじめに
近年、車載用マルチメディア機器やテレマティックスなど、カーエレクトロニクスの発展により最先端の情報通信技術を用いた車載通信機器が国内外で市場が拡大している。これらの情報通信に使用されるアンテナと機器間の接続には、高周波性能の優れた同軸コネクタが必要となる。その一つとして、SMB(Sub Miniature Type B)をベースにプッシュオンモールドロック方式を採用した車載用同軸コネクタが、欧州、米国を主に、世界的に標準化されており、 GPSやAM/FMラジオ、デジタルラジオ(DAB、XMラジオ等)、TV、携帯電話、カーナビゲーションなど多種多様な車載機器のインターフェイスとして採用されている。
本コネクタにおいては、良好な高周波性能と共に、自動車用部品としての厳しい環境の中での信頼性や機械的強度の確保、及び低コスト対応の要望も以前に増して著しい。 SMKではそのニーズに応えるべく、現行VCシリーズに次ぐ、VC-2シリーズのケーブル付きシングルストレートタイプのケーブルジャック、ケーブルプラグ(図1参照)を開発したので、本稿で紹介する。
本コネクタにおいては、良好な高周波性能と共に、自動車用部品としての厳しい環境の中での信頼性や機械的強度の確保、及び低コスト対応の要望も以前に増して著しい。 SMKではそのニーズに応えるべく、現行VCシリーズに次ぐ、VC-2シリーズのケーブル付きシングルストレートタイプのケーブルジャック、ケーブルプラグ(図1参照)を開発したので、本稿で紹介する。
【 図1】 VC-2シリーズ製品外観
製品の特徴
VC-2シリーズは、ISO20860-1、DIN72594-1、USCAR-17規格に準拠する。嵌合はプッシュオンモールドロック方式を採用しており、ケーブルジャックをケーブルプラグに挿入するだけで110N以上の優れたロック強度を確保し、自動車走行中の振動や厳しい環境変化に強く、完全な結合が可能である。
インピーダンス50Ω、使用周波数~4GHzに対応し、VSWR1.3以下(DC~2GHz)、1.5以下(2~4GHz)、コネクタ単体当たりの挿入損失0.3dB以下(DC~3GHz)、0.35dB以下(3~4GHz)であり、高整合で良好な高周波特性を備えている(表1、図3参照)。
コネクタ挿入操作は、十分なクリック感を持たせるモールドロック構造のため、嵌合時の戸惑いが少ない。 同時に、誤嵌合・逆嵌合の防止は、モールド色調およびキー形状で識別されており、クロスユースできない構造として安全性を高めている。
ケーブルジャックをプラグから取り外す際は、プッシュレバーを押しながら抜去するため、ロック解除方法が明瞭で、狭いスペースでの取り外しも容易に行える。
製品寸法は、ケーブルジャックが幅9.0mm×高さ13.5mm×奥行24.15mm、ケーブルプラグが幅9.0mm×高さ10.75mm×奥行24.15mm(図2参照)。
適合同軸ケーブルは、1.5D(外径φ3.0mm)、ケーブル接続強度は100N以上の強度を有し、RG174(外径φ2.55mm)等の同軸ケーブルにも適合する(表1参照)。
シリーズ名 | VC-2シリーズ |
タイプ | ケーブルジャック(1.5Dタイプ) ケーブルプラグ(1.5Dタイプ) |
公称インピーダンス | 50Ω |
定格電圧・電流 | 60V, 1A |
使用温度範囲 | -40℃~+105℃ |
周波数範囲 | DC~4.0GHz |
V.S.W.R. (電圧定在波比) |
1.3以下(DC~2.0GHz) 1.5以下(2.0~4.0GHz) |
挿入損失 | 0.3dB以下(DC~3.0GHz) 0.35dB以下(3.0~4.0GHz) (*コネクタ単体) |
コネクタ挿入力 | 25N以下 |
コネクタ抜去力 | 25N以下 |
コネクタ嵌合部 ロック強度 |
110N以上 |
ケーブル接続強度 | 100N 以上 (適合ケーブル:1.5D(外径3.0mm)) |
シェル保持力 (二次係止力) |
100N 以上 |
【図2】外径寸法
【図3】高周波特性:V.S.W.R.、挿入損失
開発のポイント
自動車用部品としての同軸コネクタ開発では、機械的強度、電気的性能(高周波性能)、コネクタ操作性、組立作業性等において、従来品より向上、もしくは同等レベルである必要性がある。同時にコスト低減要求も高く、あらゆる面で信頼性、コスト面への設計配慮が必要である。
VC-2シリーズは上述の要求及び機能を満足するため、以下のポイントに重点を置き、開発を行った。
1)係止(固定)強度向上と部品点数削減(コスト低減)
車載用ケーブル付きタイプのコネクタにおいては、より確実な機械的固定が求められ、ハウジングと内部シェル(ケーブル部)の係止(固定)には、従来、一次係止と二次係止の二段構えが望まれている。
そのため、現行VCシリーズでは、車載用コネクタで一般的な「リアホルダー」又は「リテーナ」による二次係止を採用しており、個別部品が必要であった。(図4参照)一方、VC-2シリーズでは、独自の一次、二次係止構造を開発し、「リアホルダー」又は「リテーナ」を削減し、且つ係止(固定)強度向上を実現させている。
また、VC-2シリーズでは、ロック強度においても現行VCシリーズでの技術蓄積及びFEM解析を活用し、モールドロックばね形状の最適化を図り、強度向上を実現している。
車載用ケーブル付きタイプのコネクタにおいては、より確実な機械的固定が求められ、ハウジングと内部シェル(ケーブル部)の係止(固定)には、従来、一次係止と二次係止の二段構えが望まれている。
そのため、現行VCシリーズでは、車載用コネクタで一般的な「リアホルダー」又は「リテーナ」による二次係止を採用しており、個別部品が必要であった。(図4参照)一方、VC-2シリーズでは、独自の一次、二次係止構造を開発し、「リアホルダー」又は「リテーナ」を削減し、且つ係止(固定)強度向上を実現させている。
また、VC-2シリーズでは、ロック強度においても現行VCシリーズでの技術蓄積及びFEM解析を活用し、モールドロックばね形状の最適化を図り、強度向上を実現している。
【図4】従来の係止方法(現行VCシリーズ)
2)圧着部接続強度確保と高周波性能
本製品では、これまでの当社の車載用同軸コネクタの設計、経験、ノウハウを活用し、独自の圧着形状を開発している。
1つ目は、高周波性能と接続強度を両立させるため、シェルの嵌合部と圧着部を一体化させ、同軸ケーブルの外部導体をスリーブで挟み込む構造を採用することにより、100N以上のケーブル接続強度を確保している。また、ケーブルの内部構造の変形や熱的負荷に対する劣化防止も図っている。
2つ目は、良好な高周波性能を実現させるためには、コネクタ伝送部、嵌合部、接続部(ケーブル結線部)の整合性を図る必要があり、特に圧着部は重要なポイントである。
圧着部については、接続強度を重視すると高周波性能が劣化し、高周波性能を重視するとケーブル接続強度が低下するという、相反する関係がある。そのため、ケーブル接続部と高周波性能の両方を満足する適切な圧着形状を設定する必要があり、構造、形状、寸法、材質の検討を実施し、最適化を図っている。
また、シミュレーション技術の活用により設計の妥当性、適正確認も開発初期段階で行うことが可能であり、早期設計・開発期間の短縮にも繋がっている。
3)組立の作業性・安定性
ケーブルタイプのコネクタは、主に得意先、またはハーネスメーカーでの組立となるため、シンプルな組立方法となる構造と部品形状が望まれている。
VC-2シリーズでは、現行VCシリーズと比較してもシンプルな構造、形状と部品点数削減を図り、組立工程の簡素化、削減と工程能力向上を実現している。
同軸ケーブルの結線方法は、現行VCシリーズと同様、中心導体、外部導体共に圧着・加締め方式を採用し、組立安定性と優れた組立作業性を有している。
4)環境への対応
各国の製品含有化学物質規制や各メーカの環境規制に適合した製品を供給することも重要である。本製品においても設計段階からの規制情報に基づいた材料選定の実施や製造工程からの規制物質の徹底的な排除など、全ての工程でクリーン化を図っている。
本製品では、これまでの当社の車載用同軸コネクタの設計、経験、ノウハウを活用し、独自の圧着形状を開発している。
1つ目は、高周波性能と接続強度を両立させるため、シェルの嵌合部と圧着部を一体化させ、同軸ケーブルの外部導体をスリーブで挟み込む構造を採用することにより、100N以上のケーブル接続強度を確保している。また、ケーブルの内部構造の変形や熱的負荷に対する劣化防止も図っている。
2つ目は、良好な高周波性能を実現させるためには、コネクタ伝送部、嵌合部、接続部(ケーブル結線部)の整合性を図る必要があり、特に圧着部は重要なポイントである。
圧着部については、接続強度を重視すると高周波性能が劣化し、高周波性能を重視するとケーブル接続強度が低下するという、相反する関係がある。そのため、ケーブル接続部と高周波性能の両方を満足する適切な圧着形状を設定する必要があり、構造、形状、寸法、材質の検討を実施し、最適化を図っている。
また、シミュレーション技術の活用により設計の妥当性、適正確認も開発初期段階で行うことが可能であり、早期設計・開発期間の短縮にも繋がっている。
3)組立の作業性・安定性
ケーブルタイプのコネクタは、主に得意先、またはハーネスメーカーでの組立となるため、シンプルな組立方法となる構造と部品形状が望まれている。
VC-2シリーズでは、現行VCシリーズと比較してもシンプルな構造、形状と部品点数削減を図り、組立工程の簡素化、削減と工程能力向上を実現している。
同軸ケーブルの結線方法は、現行VCシリーズと同様、中心導体、外部導体共に圧着・加締め方式を採用し、組立安定性と優れた組立作業性を有している。
4)環境への対応
各国の製品含有化学物質規制や各メーカの環境規制に適合した製品を供給することも重要である。本製品においても設計段階からの規制情報に基づいた材料選定の実施や製造工程からの規制物質の徹底的な排除など、全ての工程でクリーン化を図っている。
【図5】現行VCシリーズ製品外観
今後の展望
当社では、車載用同軸コネクタ現行VCシリーズとして高品質で多彩なレパートリを拡充してきた(図5参照)。今後VC-2シリーズにおいては、ケーブルジャック、ケーブルプラグの更なる幅広いケーブル種類への対応とライトアングルタイプの開発を進めている。
また、これまで培った経験、技術を活かしながらかつ新しい技術を積極的に取り入れた総合的な高度技術により、今後もカーエレクトロニクス情報通信の発展と市場動向を見据え、安全性と信頼性の確保、並びに、ユーザーニーズに対応する製品の開発、提案を行っていきたい。
SMK株式会社 CS事業部
出典:電波新聞 2012年4月12日 特集「自動車用部品技術」
出典:電波新聞 2012年4月12日 特集「自動車用部品技術」