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カメラモジュール用ソケットの技術動向

はじめに

携帯電話やスマートフォンを主とする移動体通信情報機器の普及に伴い、電子機器の小型・薄型化が進んでおり、それらに搭載される部品にも小型化・薄型化が要求されてきている。
SMKはカメラモジュール用ソケット(以下カメラソケット)のリーディングカンパニーとして、多種多様の小型・低背化ソケットの開発・量産化をしてきたが、近年においては、更なる小型化・低背化への要求が強まってきている。
従来のカメラソケットの性能を維持しつつ、小型化・低背化を実現するためにインサート成型技術を応用したカメラソケットの開発のポイントを紹介する。

カメラソケットの構造について

従来のカメラソケットは一般的に、ソケット周囲に圧入固定されたシールドプレートのロックバネと、ソケット底面に圧入固定されたコンタクトにより上下からカメラモジュールを挟み込んで電気的接続を取る部品である。(図1参照)
従来のカメラソケットの構造で小型化のネックとなっているのは、箱型を形成しているハウジングの側壁部分の厚み(A)である。コンタクトやシールドの圧入やバネ部のスペースとして必要な厚みではあるが、この壁そのものを後述する方法でなくすことにより、大幅な小型化を実現した。


【 図1】従来の一般的なカメラソケットの構造
(クリックで拡大)

開発のポイント

電子機器の小型・薄型化に対する部品の役割は大きく、コネクタには基板上での占有面積や高さを小さくすることが要求される。その一方、小型・低背化を進めていく場合でも機械的強度、接触信頼性、実装性、カメラモジュールの挿入作業性などにおいては、従来品より向上、もしくは同等レベルである必要性があり、あらゆる面で信頼性のある構造設計が要求されている。

1)小型・低背化の追求
小型・薄型化を図る上でポイントとなるのは従来品の機械的強度を維持しつつインサート成型可能なソケット構造の決定である。
小型・低背化を実現するためには、コネクタを構成するハウジングの薄肉化が重要である。しかし、単純に薄くすることは、ショートモールドやコアピンの損傷など生産時のトラブルや、コネクタとしての強度不足を招くだけでなく、リフロー実装時の熱の影響によってハウジングのソリが発生し、コプラナリティ不良による実装不具合も懸念される。
上記のような懸念点を踏まえ、当社では流動解析を活用して、最適な成型材料の選択、ゲート形状や位置の決定、金型構造の検討を実施し、ソケットでもっとも大きな占有面積(体積)を占めるモールド部分を大幅に小型化することに成功した。

2)バネ形状の検討
カメラソケットは、接続部品であると共にカメラモジュールをソケット内でホールドし、落下等の振動や衝撃に耐えられるコンタクトやロックバネの構造的強度が求められる。
そのため、コンタクトやロックバネの設計は重要な要素であり、安定したばね特性、接触信頼性確保ができる構造が必要である。項目としては、十分な接触荷重・ばねスパンの確保、適切なたわみ量の選択、接点部の形状などがあり、検討においては、FEM解析(有限要素法)を活用した。(図2参照)
その結果コンタクトの曲げや幅・厚さなどを最小限にすることができた。 また、モジュールとの接触部およびシールド実装部の表面処理には金めっきを使用し、接触・実装性能の安定、向上を図っている。


【 図2】FEM解析
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3)機械的強度の確保
通常、コネクタの小型化を図る場合には材料の厚みや基板との接続面積(リード部の面積)が小さくなり、使用上重要視される基板剥離強度やこじり強度などの機械的強度が低下することが予想される。そのため、応力集中部の補強、分散などや部品形状の工夫により、機械的強度を確保できる構造を検討し、限られたスペース内での最適な形状、大きさ、位置を設計する必要がある。
この詳細検討にもFEM解析を活用し、設計の妥当性、適正確認を課初初期段階で確認することにより、設計・開発期間の短縮にもつなげている。

4)環境負荷物質の対応(RoHS指令、鉛フリー)
EUのRoHS指令に代表される各国の製品含有物質規制や得意先様の物質規制に適合した製品を供給することも重要な課題である。
本製品においても規制情報に基づき、設計段階から対象物質を含まない材料を選定することや製造工程から規制物質を徹底的に排除することにより、全工程でのクリーン化を図っている。
また、鉛フリーはんだ対応要求に対して、はんだ濡れ性、リフロー耐熱性などを考慮した材料、表面処理を選定しており、当社の鉛フリーはんだ対応の各種試験においても満足する結果が得られている。

SMKカメラソケットの紹介(インサート成型品)

先に述べた開発ポイントに基づき、設計を行い、製品化したインサート成型カメラソケットについて 以下に紹介する。
1)製品(写真1参照)

①SMIA65
SMIA規格に準拠した外形サイズ6.5mm×6.5mmのカメラモジュールに適合する12Pinソケットである。
製品外形は、6.84mm×6.84mm×4.3mmであり、当社従来品と比較して、体積18%、実装面積13%、質量57%の小型化を実現した。

②Form55
外形サイズ5.5mm×5.5mmのカメラモジュールに適合する14Pinソケットであり、当社で量産化したインサート成型カメラソケットにおいては最小レベルのカメラモジュールに対応している。製品外形は5.84mm×5.84mm×4.0mmであり、当社従来品と比較して、体積21%、実装面積24%、質量33%の小型化を実現した。



【写真1】インサート成型カメラソケットのレパートリー
( クリックで拡大)

③Form85
外形サイズ8.5mm×8.5mmのカメラモジュールに適合する16Pinソケットである。SMIA85規格に2pin追加したタイプのカメラモジュールに対応している。
製品外形は8.86mm×8.86mm×4.2mmであり、当社従来品と比較して、体積20%、実装面積14%、質量53%の小型化を実現した。

④Form65
外形サイズ6.5mm×6.5mmのカメラモジュールに適合する24Pinソケットである。シールドと4面配列のコンタクト24pinを一括でインサート成型で製品化することに成功した。
製品外形は6.88mm×6.88mm×4.0mmであり、当社従来品と比較して、体積16%、実装面積23%、質量50%の小型化を実現した。

2)性能について

代表例として上記④のソケットについて従来品との比較評価を実施した。

2-1接触性能
 各種環境試験後においても従来品と同様、実使用上問題ない接触性能を有していることを確認した。

2-2実装強度
 カメラモジュールを挿入した状態でソケットへ水平方向の負荷を印加。
 X方向、Y方向とも、従来品と同様、十分な実装強度(100N以上)を実現した。

2-3 耐落下衝撃性
 ±X/Y/Z方向、各3回(計18回)の落下試験を実施。
 2mの高さまで落下後の変形、接触性能、瞬断等の異常がなく、実使用上、十分な性能を有していることを確認した。

2-.4カメラモジュール挿入作業性
 カメラモジュールをソケットへ挿入する際に必要な荷重を測定。
 従来品と比較して約70%低減することができ、カメラモジュールを挿入しやすいソケット構造を実現した。

今後の展望

あらゆる電子機器の小型、軽量、薄型化の流れは今後も進んでいく傾向にあると考えられ、今回紹介したカメラソケットついて、さらなる低背化、省スペース化、低価格化の開発を進めている。
当社はこれまでのカメラソケット開発で培った経験、技術を活かし、かつ新しい技術も積極的に取り入れた総合的な高度技術により、さらなる高性能・小型・薄型化の製品開発を推進してきている。
また、各メーカーの環境問題への取り組みから、環境負荷物質の低減・廃止はもちろんのこと、省資源、省エネルギー化へも配慮し、市場ニーズに合わせたコネクタの製品開発、提案を今後も行っていきたい。

筆者:SMK株式会社 CS 事業部 
出典:電波新聞 2014年1月9日 特集「2014年注目の先端技術と応用技術」

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