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Windows 7対応赤外線送受信ユニットの技術

はじめに

Windows XP Media Center Edition(以下XP), Windows VistaⓇ(以下Vista) 及びWindowsⓇ7のHome Premium以上のエディションには、「Media Center」(以下メディアセンター)機能が搭載されている。メディアセンターには、10フィートGUIと呼ばれる赤外線リモコンで操作できるような機能が標準で備わっている。そのため、ユーザーは、TVなどを操作するのと同様なユーザーインタフェースで、パソコンを操作することが可能になってきている。また、受信機から、周辺機器に対して、赤外線信号を送信する機能も備わっているため、ケーブルTVのBOXを制御することも可能となっている。
Windowsで操作できるリモコンの仕様に関しては、Windows XPの時は、赤外線送信プロトコルとリモコンデザイン、及び、パソコン側のHIDコードしか仕様が公開されていなかった。そのため、受信側デバイスはマイクロソフトが指定した特定のデバイスしか接続できなかった。Windows VistaⓇから、受信側の仕様が公開されるようになり、WindowsⓇ7では、さらに新たな赤外線プロトコル(QPパルス)も推奨されるようになった。現在では、Windowsロゴが取得された赤外線送受信ユニットが各社から製品化され始めている。
ここでは、WindowsⓇ7で使用されている赤外線通信方式とWindows上での基本動作を解説し、その後、赤外線送受信ユニットのハードウェア構成、及び、ソフトウェア構成について、解説する。
リモコン送受信機ユニット
【写真1 リモコン送受信機ユニット】

赤外線通信方式

現在、WindowsⓇ7で推奨されている赤外線通信方式には、Philips/Microsoft RC-6(以下RC-6)とMicrosoft/SMK QP(以下QP) IRプロトコルの2種類がある。
RC-6プロトコルは、Philips社が開発したプロトコルで、XP時代から使われている。また、QPプロトコルは、SMK社が開発したプロトコルであり、WindowsⓇ7から新たに推奨されるようになった。
赤外線通信方式は推奨となっているので、独自の赤外線方式を採用することも可能だが、独自の赤外線通信方式を使用すると受信側の開発を独自で行うか、デバイスドライバを独自で開発することになり、今後の機能拡張、Windowsの仕様変更等に柔軟に対応できなくなってくる可能性もでてくる。そのため、現実問題としては、RC-6かQPのどちらかを使用することになる。
どちらのプロトコルも、赤外線の中心波長は950nm、搬送波は36kHz~38kHzとなっており、通信距離、指向特性等のリモコンとしての性能は、一般のTV、BDレコーダーなどと同じになっている。両者のプロトコルの違いを、表1に示すが、大きな違いは、符号化方式が異なっており、その違いにより、同じ回路構成で、リモコンを構成した場合には、QPの方がRC-6より、消費電流が小さくなる。その他、同じパケットに含まれるビット数もQPの方が多くなっており、いろいろな機器に対応できる可能性が広がってきている。リモコンの裏ラベルを見ると、どちらの方式が採用されているかを確認することができるが、次の章で説明するとおり、アプリケーションレベルでは、どちらの方式が使われているかを意識する必要がない。
赤外線方式比較
【 表1 赤外線方式の比較(RC-6とQPの違い)】

Windows上での動作

リモコン送信機【写真2 リモコン送信機】
Windows上で、リモコン信号がどのように扱われているかを解説する。
リモコン信号の流れを図1に示す。図1において、リモコンから送信された赤外線信号は、受信ユニットにより、50μs毎に、サンプリングされ、Run Length Coding (以下RLC)と呼ばれる方法でUSBバスを通して、パソコンに伝達される。
Windowsは、そのRLCをさらにソフトウェアデコードして、リモコンのボタンに対応したHIDコードに変換し、イベントを発生させる。
HIDとは、マウス、キーボード、タッチパッド等のHuman Interface Devicesのことを指し、HIDプロトコルコードは、USB HIDクラスで定義されている。WindowsⓇ7のリモコンで使用されているHIDコードは、キーボードコード、システム(Standby ON/OFF等)コードの他に、音量制御(Mute,VOL+,VOL-)用のコンシューマコントロールコード、マイクロソフトの独自コードが含まれている。
アプリケーションレベルでは、イベントされたHIDコードを判断して、処理するようになっているため、アプリケーションレベルで赤外線通信方式を特に気にする必要はない。
また、赤外線を送信する時は、メディアセンターアプリケーションから、RLCをトランシーバータイプの受光機に送信する。受光機は、RLCに従って、赤外線を出力する。
リモコン信号処理
【図1 リモコン信号処理】

リモコン送信機の構成

リモコン送受信ユニットの写真と、リモコンのキーレイアウトを、写真1、写真2に示す。リモコン側の回路構成は、一般的なTVのリモコンと同じなので、特に詳しい説明はしない。一般のリモコンと違うのは、Green Start buttonと呼ばれるメディアセンターを起動するためのボタンが用意されており、このボタンはサイズ、デザインも決められており、使用するためには、マイクロソフトのKey Logo License Agreementの要求を満たさなければならない。
また、リモコンのボタン上のレイアウトも機能単位で同じように配置されるように決められており、ボタン上のアイコンも定義されている。そのため、ユーザーがパソコンを買い換えるたびに、リモコンの操作方法で迷うことはない。

リモコン受信ユニットの構成

受信ユニットは、RFタイプ、IR HIDタイプ、Legacy Devices(XP等で使われていた受信機)、Emulation devices(以下エミュレーションデバイス)等に分類されるが、ここでは、一般的なエミュレーションデバイスのトランシーバーと呼ばれるタイプに関して解説する。
図2にリモコン受信ユニットのハードウェアブロック図を示す。
トランシーバーは、リモコンの赤外線信号を受光するためのLongRange受光素子、SetTopBox(STB)のリモコンを学習するときに使用するフォトトランジスタ、赤外線出力を行うIRブラスターを接続するためのジャック、及び、パソコンとインタフェースするためのUSBインタフェース内蔵マイコンで構成されている。
LongRange受光素子は、中心周波数が36kHz~38kHzのBand Pass Filter(BPF)とAutomatic Gain Control(AGC)を持つことが求められ、軸上5mを満たすものでなければならない。また、一般のオーディオ用の受光素子と違うところが、30kHz~60kHzまでの搬送波を受光できることが求められている。これは、STBのリモコンを学習するために、リモコンのエンベロープ波形をとる必要があるためと、STBを登録するときに、Parse-and-Matchと呼ばれる機能を使って、STBリモコンの赤外線信号を受光し、メーカー判定しなければならないので必要になってくる。また、エンベロープ波形が、送信波形に比較して250μs以内に入っていないと、ロゴ取得する際に、エラーになるので受光素子の選定には、注意が必要になってくる。
学習で使用するフォトトランジスタは、学習させるリモコンの搬送波をカウントするために必要になってくる。特に特別なものは必要ないが、一般のリモコンを5cm程度に配置した状態で、LongRange受光素子と同様に、30~60kHzの搬送波を、飽和せずカウントできれば、問題にはならない。
赤外線信号を送信するためのジャックは、IRブラスターを2個、接続できるようになっており、30~60kHzの搬送波付きの信号が出力される。内部で、搬送波出力付きのリモコン信号をどちらのジャックに接続されるか、選択できるようになっている。また、内部でマイコンのA/D入力端子にも接続されており、IRブラスター接続の有無を確認できるようになっている。
パソコンとのインタフェースはFullSpeedのUSBで接続されており、パソコンに標準ドライバを使用するように認識させるために、USBディスクリプタに、Microsoft Compatible Device Descriptorを定義しておく。
具体的には、Microsoft OS String DescriptorとExtended Compat ID Descriptorの応答をすればよい。エンドポイントは、INエンドポイントとOUTエンドポイントが必要になる。INエンドポイントには、リモコン受光信号(RLC)とコマンド応答がパソコンに出力される。OUTエンドポイントには、Windowsからのコマンドと赤外線信号を送信するときに、受信と同様のRLCがパソコンから出力される。USB通信のパケットサイズは、ハードウェアに合わせて設計すればよいが、リモコン信号をRLCとして流すために、充分な処理能力とバッファ容量を用意しておく必要がある。
ハードウェアブロック図
【図2 リモコン受信機トランシーバータイプ ハードウェアブロック図】

まとめ

WindowsⓇ7対応の赤外線送受信ユニットに関して、トランシーバーの構成を元に解説したが、詳細な情報は、マイクロソフトからドキュメントが出されているので、そちらを参照してほしい。今後は、Windows用のリモコンにポインティングデバイス(静電PAD等)、キーボード機能等が追加され、インターネット操作等の向上も可能になってくる。また、家電との融合という意味では、各社のTV、BDR等のプリセットコード内蔵、RF化(Bluetooth、RF4CE)することも考えられ、パソコンの入力インタフェースとしてのひとつとして、位置づけがされていくと思われる。


筆者:SMK FC事業部 設計部 設計4課 三輪 健一 
出典:電波新聞 2010年1月7日 「'10年注目の先端技術と応用技術」

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