2.4GHz帯RFモジュールの技術動向
2.4GHz帯における電波事情
無線を利用した電子製品は各国の電波法を遵守する必要があるところ、2.4GHz帯ISMバンドは、もともと電子レンジや微弱な出力の電磁波を発生する機器が自由に使える帯域として開放されており、比較的規制が緩やかで世界展開が図りやすい。このため、2.4GHz帯ISMバンドを使用した無線機器が市場に多く出回るようになった。
具体的には、Wi-Fi(IEEE802.15.11b)、 Bluetooth(IEEE802.15.1)、ZigBee(IEEE802.15.4)、また、その他独自仕様の無線機器も存在する。
これらの無線機器は、一般の家庭環境の中で同時に使用されることから、2.4GHz帯を使用する無線機器は、他の無線機器との干渉を抑え共存していくことが必要になる。
これらの無線機器は、一般の家庭環境の中で同時に使用されることから、2.4GHz帯を使用する無線機器は、他の無線機器との干渉を抑え共存していくことが必要になる。
【ZigBee RF4CE対応2.4GHz帯 アンテナ一体型RFモジュール(FD7003外観)】
リモコンを取り巻く状況
ここで、昨今のリモコンを取り巻く状況について簡単に説明する。 これまでは、赤外線通信を用いるリモコンが殆どであった。 しかし、テレビ画面とチューナーの分離化や、家電製品の高機能化に伴い、無指向性と共に、双方向通信と高速通信がリモコンに求められている。さらに1つのリモコンで、複数の機器をコントロールしたり、セット機器間同士の通信など、これまでの赤外線通信では到底実現し得なかったリモコンを含めたネットワーク化も求められている。これらの解決方法の一つとして、電波を利用したRFリモコンの導入が始まっている。ZigBee RF4CE
2.4GHz帯は世界各国で共通して使用できる帯域であり、各国の展開が図り易いメリットがある反面、無線の干渉が想定される帯域であることは上述した通りであるが、仮にこの帯域を独占して使用するような、独自仕様の無線リモコンが各社から多数市場へ投入されると、さらに無線干渉に拍車がかかる結果となる。 また電波は一定の範囲に届くから、一個人の問題に留まらず、周辺の隣人へも影響を及ぼし深刻な問題となる。このような背景から、一般家庭で安心してRFリモコンが使用できるよう一定のルール作りが必要との観点から、大手家電メーカー、ICデバイスメーカーが中心となり、リモコンにおける無線プラットフォームの標準化を目指す動きがはじまった。これがRF4Cコンソーシアムの設立である(2008年6月)。
同コンソーシアムでは、他の2.4GHz帯無線局との共存、誤接続防止だけではなく、将来的な拡張性や秘話性(暗号化)も議論され、IEEE804.15.4のPHY/MAC層をベースにリモコンに適した無線通信仕様が作り上げられた。
その後、同コンソーシアムは、ZigBeeアライアンスと2009年3月に合併し、現在はZigBeeアライアンスの中で活動が続けられている。 またこの通信仕様は、ZigBeeアライアンスの中で公開され、ZigBeeアライアンス・メンバであれば誰もが仕様を入手できるオープン・スタンダードなスタイルになっているから、さまざまなセット機器メーカーが仕様を入手し採用し得る。またICデバイスメーカーの参画も容易でありシナジー効果が期待される。
ZigBee RF4CE RFモジュール
SMKはリモコン製造メーカーとしてこれまでに長年培ってきたノウハウと高周波技術を用い、リモコン用途に最適なZigBeeRF4CEに対応したRFモジュール(FD7003)を開発し、RFリモコンの需要拡大に応えるべくいち早く提供を開始した。ここで本RFモジュールの特徴について簡単に紹介する(一般特性は表1を参照)。
①2.4GHz ISMバンドを使用した無線通信(World Wide対応)
②ZigBee RF4CE Version 1.00およびIEEE802.15.4準拠
③リモコンを中心としたPAN(Personal Area Network)の構築が容易
④DSSS変調(Direct Sequence Spread Spectrum)による耐干渉性の向上
⑤電源電圧:2.1~3.4VDC(電池駆動が可能)
⑥スタンバイモードによる電池寿命の長期化(リモコン側RFモジュール)
⑦間欠動作による低消費電力化(セット機器側RFモジュール)
⑧各種赤外線通信フォーマットへのデコード出力(IrOUT)機能搭載
既存の赤外線受光器を本RFモジュールと置き換えるだけで、セット側のソフトの変更を必要とせず、容易にRFリモートコントロールシステムの実現が可能
⑨ロケーション機能搭載(リモコン紛失時の呼び出し機能)
⑩モジュール単体で日本電波法、FCC(米国)、IC(カナダ),NCC(台湾)の認証を取得済み
RFモジュールを組み込むセット機器としては、無線認証取得作業が不要となり開発期間の短縮や認証費用の削減に貢献。尚、欧州(CE)に関しても、RFモジュールとして所定の機関で適合確認は完了している。
以上から、RFリモコンの導入の不便性を解消し、ZigBee RF4CEプラットフォームにおける他の無線局との共存、秘話性、拡張性を容易に実現できる「リモコン用途に最適なRFモジュール」として商品化した。
項目 | 仕様 |
---|---|
電源電圧 | 2.1~3.4V |
動作温度範囲 | -10~+50℃ |
上位インターフェース | URAT 57.6kbps |
IRデコード出力 | |
外部接続 | 2.0mmピッチ 8ピン |
外形寸法 | 17mm×42mm×5mm (接続コネクタ含まず) |
項目 | 仕様 | 単位 | 備考 |
---|---|---|---|
無線規格 | ZigBee RF4CE | - | Specification Version 1.00 |
周波数範囲 | 2400~2483.5 | MHz | |
変調方式 | DSSS | Direct Sequence Spread Spectrum | |
アンテナ | プリントアンテナ | (モジュール一体型) | |
通信距離 | 20 (参考値) | m | 妨害電波がないオープンエアー |
RFモジュールのアンテナ技術
一般に、Wi-Fiや、 Bluetooth用のモジュールは、省スペースに対応するべくチップアンテナを使用するケースが多い。これは、携帯電話や、ノートPCなどのモバイル用途に使用されることが多いためである。しかしながら、リモコンは操作性を確保する必要があることから、モバイル機器ほど操作ボタンを小さくする必要はなく、むしろ幅広いユーザーにストレスなく使用できる大きさの操作ボタンを配置するケースが多い、このためRFモジュールをリモコンへ収納する一定のスペースは確保できる。
そこで当社リモコン用RFモジュールは、基板上のパターンでアンテナを形成する「プリントアンテナ」を採用している。 これは、部材コスト面で有利であると同時に、リモコンとセット機器間の無線放射特性を最適化できるためである。 プリントアンテナの設計には、シミュレーション技術(図1)や高周波評価技術が必要になるが、コスト面、無線性能、さらに各国の無線認証の規制に対しても総合的に最適化できるなど有利な点が多く、当社の高周波技術が活かされている。
【図1 プリントアンテナのシミュレーション結果】
今後のRFリモコンについて
今後RFリモコンの普及はますます加速するものと考えられ、これまでの「操作スタイル」や「リモコン形状」は覆され、より便利に、よりスタイリッシュなリモコンが登場するものと考えられる。 また、さまざまな家電製品にZigBeeRF4CE規格の無線プラットフォームの普及が進めば、現在リビングに複数あるリモコンが1つに統合され、あらゆる方向にある家電製品を、テーブルに置かれた1つのリモコンで簡単にコントロールすることも可能となるであろう(図2)。【図2 今後のRFリモコンについて】
筆者:SMK FC事業部 開発推進課 大塚 健二
出典:電波新聞 2010年5月13日 特集「ワイヤレス通信技術」
注) ・RF:Radio Frequency:無線周波数 ・ISM:Industrial Scientific Medical:産業科学医療用 ・RF4CE:Radio Frequency for (four) Consumer Electronics ・UART:Universal Asynchronous Receiver Transmitter:非同期送受信 ・DSSS:Direct Sequence Spread Spectrum:直接周波数拡散方式 ・IEEE:Institute of Electrical and Electronics Engineers:(米国)電気電子学会 ・FCC:Federal Communications Commission:(米国)連邦通信委員会 ・CE:欧州連合のラテン系言語表記に由来。仏語の場合はCommunauté Européenneの頭文字に相当 |