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リモコンの高機能化


ZigBee RF4CE方式 待機時電流、高速通信で優れる

はじめに

2010年秋に北米向けで発売になったグーグルTVに代表されるインターネットTVには、インターネット経由で配信された動画を視聴できる機能が備わっている。また、ネットワークへの接続が前提となるため、DLNAに対応した機器との接続性もよくなり、ホームネットワーク上のさまざまなコンテンツにアクセスできるようになってくる。そのため、従来の十字カーソルキーで、メニューを選択する縦横だけの操作だけでは操作しずらくなり、GUI(グラフィカルユーザーインタフェース)を使ったフリーカーソル(マウス操作)機能、および、文字入力するためのキーボード機能が必要になってくる。
従来のTV操作には、赤外線(IR)通信を使ったリモコンが一般的になっているが、従来のIRプロトコルでは、通信速度が遅いため、マウス操作、キーボード操作といった比較的、高速なレスポンスを要求するような入力デバイスには対応できなくなっている。そのため、リモコンで使われる通信方式が、IR通信から、高速度、無指向性、双方向性といった特徴を持つ無線(RF)通信に切り替わりつつある。
ここでは、リモコンに採用が進んでいるRF通信方式とマウス操作、文字入力といったユーザーインタフェースに対応するための各種入力デバイスに関して解説する。

リモコンで使われている通信方式

現在、TVのリモコンで使われている赤外線通信方式は、家電製品協議会で推奨しているプロトコル以外に、各社が独自で決めたプロトコルを使用していることが一般的となっている。それらの赤外線方式は、ボタン操作を基本としているので、マウス、キーボードといった早い入力操作には適していない。IR通信とRF通信を比較した結果を表1に示す。

[表1]通信方式比較
*代表的な数値を示す。メーカー独自のRF方式は記載していない。
動作時消費電流はリモコンとして使用する場合の値を記入、使用条件により異なる。
 赤外線通信BluetoothZigBee RF4CEWi-Fi(WLAN)
周波数帯域38kHz2.4GHz2.4GHz2.4GHz/5GHz
変調方式PPMFHSSDS-SSDS-SS
通信速度約480bps1Mbps(Basic)
3Mbps(EDR)
250kbps54Mbps、
300~600Mbps
通信距離約10m~10m(Class2)
~100m(Class1)
約20m30m~300m
規格各社独自方式
家電製品協議会
IEEE802.15.1IEEE802.15.4IEEE802.11 a/b/g/n
通信方向単方向
(リモコン→本体のみ)
双方向双方向双方向
消費電流
待機状態
10μA以下1~3mA(Sniff mode)10μA以下-
消費電流
動作状態
約30mA約20mA約10mA約100mA
特徴低速、安価同期をとるのに時間がかかる
対応プロファイルが多い
接続が早い
対応プロファイルが少ない
高速だが、消費電流が高い

表1に示すように、赤外線を使用したプロトコルでは、通信速度に限界があり、マウス等の操作性をよくするための通信速度を確保するのは難しい。また、仮に可能となっても、IRを常時出力することになり、消費電流の点で不利になる。そのため、パソコンで使われるワイヤレスマウス、キーボードといった入力デバイスの通信方式は、RF通信が一般的である。
パソコンで使われているRF通信方式には、Bluetooth、及び、独自方式が使われている場合が多い。また、パソコンで使用されるワイヤレスマウス、キーボードには、スライド式の電源スイッチが一般的に使われ、使用しないときは、電源をオフできるようになっている。そういった使い方が一般となっているが、リモコンでは使用しないときに、いちいち、電源スイッチをOFFするようなユーザーはいない。そのため、操作していない待機時の電力を抑え、操作が行われたら、すぐに応答できるレーテンシーの優れた通信方式が適している。
現在、パソコン市場では、チップメーカーが独自で決めている通信プロトコルが多く見かけられるが、TV市場では、IEEE802.15.4ベースで規格化されているZigBee RF4CEが普及してきている。今後、RFが広がるにつれ、限られたRF帯域を有効に使うことを考えると、規格にそった通信方式が望ましい。
表1にあるように、Bluetoothは、プロファイルも充実していて、使いやすさがある反面、待機時も同期を行う必要があり、数mAの電流が必要となり、Wi-Fi通信は、高速でデータ量の多いものでも対応できるが、動作電流が大きいため、乾電池駆動のリモコンには適さない。
リモコン用途を考えると、ZigbeeRF4CE方式(以下RF4CE)が、待機時電流、WakeUpしてから高速で通信が開始できるなどの点で優れている。
なお、パソコンで使われている独自方式のRF通信方式にも、消費電流等で、良い通信方式は、いくつかあるが、規格化がなされていないため、今回の比較対象からは除外している。
RF4CEは、RFリモコンの業界標準を目指して策定された比較的新しい通信規格であるため、まだ、リモコンプロファイルだけしか決められていないが、今後、ヒューマンインタフェースデバイス(HID)等、順次、規格化されていくものと思われる。
2011年以降、各チップメーカーからも、RF4CEに対応した新RFチップがリリースされてくる予定なので、消費電力もさらに小さくなり、低価格化も進んでいくものと思われ、市場拡大していくものと思われる。
今後、待機時電力を迎えたBluetooth4.0(BLE)に対応したチップが、市場展開してくると、リモコンに採用される可能性も広がってくると考える。

リモコンで使われる各種入力デバイス

リモコンでマウス機能の替わりに使われる各種入力デバイスには、操作性からわけると、面をなぞることにより操作するタッチパッドタイプ(写真1)、キートップ内にセンサーを埋め込んで、先端部分を繰り返しなぞることで操作するオプティカルタイプ(写真2)、スティック部分に指を置いたまま傾けて操作するスティックタイプ(写真3)、モーション、ジェスチャーで操作するモーションコントロールタイプ(写真4)の4種類に分類される。
それぞれ、一長一短はあるが、リモコンの中に内蔵するためには、待機状態での消費電力を抑え、なおかつ、レーテンシーに優れた機能が必要になってくる。その中で、各社TVのGUI操作にあわせて、使いやすいものが採用されている。特に、マウス操作だけでなく、スクロール操作、ドラッグ操作、フリックに似た操作などへの対応も必要となり、他のキーとの組み合わせで実現していくことになる。
タッチパッドタイプ
【写真1】タッチパッドタイプ
オプティカルタイプ
【写真2】オプティカルタイプ(操作性はトラックボールと同様)
スティックタイプ
【写真3】スティックタイプ
モーションコントロールタイプ
【写真4】モーションコントロールタイプ

文字入力機能

マウス操作と同様、インターネットでの検索、番組検索等を使う機会が多くなるため、文字入力機能が必要になってくる。文字入力には、パソコンでは、キーボードを使用するのが一般的であったが、リビングにキーボードを常時、置いておくわけにはいかない。そのため、リモコンと大差ない大きさで、キーボードと同じようなキー数を確保する必要がでてくる。写真5のように、キーサイズを小さくして配置し、同じ側に、通常の音量操作等を行うボタン部分、ポインティングデバイスを一体化して、コンパクトにおさめるタイプと、写真6のように、必要なときだけ、キーボード部をスライドさせる方法がある。
また、ちがったアプローチとして、モーションコントロールセンサーを使いセット本体の画面にキーボードを表示して入力するソフトウェアキーボード、携帯電話のような入力、手書き文字入力、音声入力などの方法が考えられる。

その他付加機能

その他、インターネットでのオンライン購入も可能になってくると、個人認証等が簡単にできるような指紋認証、もしくは、非接触カードリーダーライタ機能が考えられる。
また、ホームネットワーク上のDLNA対応機器の情報をリモコンで取得し、コンテンツ再生等を行える機能も考えられるが、リモコンにコンテンツ情報を表示して選択するなども考えられてくる。ただ、リモコンに表示機能を付けると、高価になるため、スマートフォンを使った操作というのも考えられている。
ポインティングデバイス一体型キーボード
【写真5】ポインティングデバイス一体型キーボード
スライド式キーボード
【写真6】スライド式キーボード

まとめ

インターネットTVに使用されるリモコンの通信方式、入力デバイスを中心に解説した。
今後、インターネットTVが、普及していくにつれ、TV画面のユーザーインタフェース、及び、リモコンの通信方式が、パソコンのように統一した規格で、決められていくと思われる。それにあわせて、TV画面を如何に直感的に操作できるかが、リモコン、もしくは、TVを操作する機器に求められていくことになる。
将来的に、本体と入力機器との間の通信方式が統一されてくると、どのメーカーのTVに対しても、ユーザーが使いやすいリモコンを選択できるようになり、ユーザーの好みにあわせてリモコンを購入する時代になってくる可能性もある。
筆者:SMK株式会社 FC事業部 
出典:電波新聞 2011年 1月 6日 特集「2011年注目の新技術」

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