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高周波同軸コネクタの技術動向

はじめに

携帯電話を主とする移動体通信情報機器の普及やカーエレクトロニクスの発展に伴い、電子機器の小型・薄型化が進んでおり、使用される部品にも小型化、薄型化が要求されてきた。
更に近年においては、急増する情報量への対応、新サービスの開始等、最先端の情報通信技術に対応する為の高周波化が進んでおり、その機器に使用される同軸コネクタについても広帯域化が要求されてきている。その中でSMKは、これまでの各種コネクタで培った技術を活用し、市場ニーズに合わせた同軸コネクタを数々製品化してきた。
今回、本稿では、SMT対応スイッチ付き同軸コネクタの開発のポイントと弊社TSシリーズの中より、TS-9、TS-10の概要に関し、紹介する。

スイッチ付き同軸コネクタ(TSシリーズ)

スイッチ付き同軸コネクタは、コネクタ内部に開閉接点のスイッチ機構を持つ同軸コネクタである。機器内部アンテナと高周波ユニット間の伝送路上に配置、接続され、プラグを挿入することで、高周波ユニットからの信号をプラグ側へ切り替える機構となっている。主な使用用途としては機器の調整、出力確認や外部接続によるアンテナの切り替え等が挙げられる。
当社においては、端末機器の設計、デザイン、検査方法等の自由度確保に対応するため、嵌合方向が基板に対して水平なライトアングルタイプと嵌合方向が基板に対し垂直なストレートタイプを開発し続けている。(図.1参照)
スイッチ付同軸コネクタレセプタクル
【 図1 スイッチ付き同軸コネクタ・レセプタクル(TSシリーズレパートリー<一例>)】

開発のポイント

シミュレーションと実測値の比較例
【図2 シミュレーションと実測値の比較例】
電子機器の小型・薄型化及びに対する部品の役割は大きく、コネクタには基板上での占有面積や高さを小さくすることが要求され、具体的にはチップ部品の高さ以下が望ましいとされている。
その一方、小型・低背化を進めていく場合でも機械的強度、接触信頼性、実装性、作業性等においては、従来品より向上、もしくは同等レベルである必要性があり、あらゆる面で信頼性のある構造設計が要求されている。
1)小型・低背化の追求小型・薄型化を図る上でポイントとなるのは成形品の薄肉化とコンタクト(特にばねコンタクト)のコンパクト化である。
①成形品の薄肉化
小型・低背化を実現するには、コネクタを構成するハウジングの薄肉化が重要な項目となる。 しかし単純に成形品を薄くすることは、ショートモールド、コアピンの損傷など生産時のトラブルや全体的な強度不足等の問題が生じやすいことに加え、リフロー時の熱の影響によるソリなども懸念される。又、本製品は高周波部品の為、強度だけでなく高周波特性を考慮した材質の選定もポイントとなる。
このことを踏まえ、製品に最適な樹脂選択、金型構造、ゲート形状及び位置と、流動解析などを活用して、多方面から検討し、0.2mm以下の薄肉でも量産可能な形状の設計を行った。
②コンタクト(ばねコンタクト)のコンパクト化
スイッチ付同軸コネクタは、接続部品であると共にON/OFFの切換えスイッチ機構付きのため、コンタクトの設計は重要な要素であり、安定したばね特性、接触信頼性確保ができる構造が必要である。
項目としては、十分な接触荷重・ばねスパンの確保、適切なたわみ量の選択、接点部の形状等があり、検討においては、FEM解析(有限要素法)を活用した。その結果コンタクトの曲げや幅・厚さ等を最小限にでき、独自のコンパクトスイッチ構造を実現した。 又、接触部の表面処理には金めっきを使用し、接触性能の安定、向上を図っている。
2)広帯域化(シミュレーション技術の活用)
コネクタの広帯域化を実現させるには、コネクタの伝送部、嵌合部、基板接合部等の整合性を図る必要性がある。 スイッチ付同軸コネクタにおいては、当社他製品の技術蓄積の活用、シミュレーション、試作実験結果から、構造、形状、寸法、材質の検討を実施し、製品の不整合箇所の低減を図りRF性能の向上、広帯域化を実現させている。(図2参照)
 また、シミュレーション技術の活用により設計の妥当性、適正確認も開発初期段階で行うことができ、設計・開発期間の短縮にもつながっている。
3)機械的強度の確保通常、コネクタの小型化を図る場合には材料の厚みや基板との接続面積(リード部の面積)が小さくなり、使用上重要視される基板剥離強度やこじり強度等の機械的強度が低下することが予想される。その為、応力集中部の補強、分散等や部品形状の工夫により、機械的強度を確保できる構造を検討し、限られたスペース内での最適な形状、大きさ、位置を設計する必要がある。
4)適合プラグ、プローブの特長、操作性
主に検査用プラグは、自立嵌合タイプとプローブタイプの2種類を準備している。自立嵌合タイプの嵌合はハーフロックでクリック感があり、容易に嵌合確認が可能であり、主に開発時の評価、特性確認に適している。
プローブタイプは、安定した測定が行なえるストローク、呼込み範囲を設定した構造であると共に、使用する材質や表面処理も高耐久性を意識し選定している。 挿抜耐久性に優れ、主に量産ラインでの自動検査等、作業効率向上に適している。(図3参照)
また、プラグ、プローブの形状については、お客様の使用方法やニーズに合わせた対応も行っており、レパートリーの拡充を図っている。
TSシリーズ プラグ、プローブ形状イメージ
【図3 TSシリーズ プラグ、プローブ形状イメージ】

SMKスイッチ付き同軸コネクタの紹介

TS-9シリーズ(ライトアングルタイプ)
【図4 TS-9シリーズ(ライトアングルタイプ)】
先に述べた開発ポイントに基づき、設計を行い、製品化したスイッチ付同軸コネクタについて以下に紹介する。
①TS-9シリーズ(ライトアングルタイプ)
TS-9シリーズはライトアングルタイプのスイッチ付同軸コネクタであり、レセプタクルのレパートリーとして、基板上に実装されるオンボードタイプと基板からのコネクタ実装高さを抑えられるエッジマウントタイプの2種類がある。レセプタクルの嵌合部は2種類共に同一形状であり、プラグはレセプタクルの種類を問わず、嵌合が可能である。(図4参照)
同製品は主に外部接続用を考慮した製品であり、外部接続用として必要な機械的性能を確保する為、レセプタクルのシェルにはダイカストを採用し、肉厚の確保と継ぎ目のない構造とすることにより変形の抑制を行っている。又、表面処理には耐磨耗性の高い処理方法を採用し、高挿抜耐久性に対する配慮を行っている。プラグにおいては、プラグのシェル嵌合部にリングを設ける構造とし、シェルの広がりを抑制し、こじり強度の向上を図っている。
高周波特性は携帯電話や無線LAN等をカバーするDC~3GHzの周波数帯域に対応し、高整合で良好な特性を有している。
②TS-10シリーズ(ストレートタイプ)
TS-10シリーズはストレートタイプのスイッチ付同軸コネクタであり、基板占有エリアが2.2mmX2.2mmの省スペース化を実現しており、高密度な実装が可能である。(図5参照)
同製品は機器調整、出力検査を目的とした検査用と外部接続用の両面で使用が可能であり、外部接続用として必要な機械的性能を確保する為、シェル嵌合部の形状は、プラグ挿抜時のこじりを考慮し、シェルのつなぎ目をなくした一体形状であり、シェルの変形、破損対策を施している。又、リード部の配置をGND四隅(中心端子と合わせて計6箇所)にバランスよく設け、形状もガルウイング形状にする等、フィレット部を最適化し、基板との接続信頼性や強度を考慮した構造となっている。
高周波特性は携帯電話や無線LANに加え、ETC等の高帯域をカバーするDC~6GHzの周波数帯域に対応し、高整合で良好な特性を有している。
TS-10シリーズ(ストレートタイプ)
【図5 TS-10シリーズ(ストレートタイプ)】

今後の展望

あらゆる電子機器の小型、軽量、薄型化や広帯域化の流れは今後も進んでいく傾向にあると考えられ、今回紹介したスイッチ付同軸コネクタについて、ストレートタイプ、ライトアングルタイプ共に、安価タイプや、更なる低背化、省スペース化タイプの開発を進めている。
当社はこれまで同軸コネクタの開発で培った経験、技術を活かし、かつ新しい技術も積極的に取り入れた総合的な高度技術により、更なる広帯域化に対応した高性能、小型、薄型化の製品開発を推進してきている。
また、各メーカーの環境問題への取り組みから、環境負荷物質の低減・廃止はもちろんのこと、省資源、省エネルギー化へも配慮し、市場ニーズに合わせたコネクタの製品開発、提案を今後も行っていきたい。


SMK株式会社 CS事業部 
出典:電波新聞 2010年2月4日 特集「コネクタ技術」

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